2018年3月16日金曜日

2017年冬くらいの短歌(2) 免罪符とか

死にかけの息切れのように鳴く蝉へなりそうになる塞いでる夜

駅ホーム目的地からその先に向かう電車はゆりかごのよう

ホットココアにバターを入れる暴力を覚えてしまい冬が愛しい

性欲と恋愛の違い説くよりも組み伏す腕の重さが痛い

感情に名前が無くて飢えていて免罪符とかどうでもいいし

おおおんと鳴く深海の魚たち人もたまには鳴くと良いのだ

馬鹿だねと口を歪めて言うせいでどうやら卒倒しそうに甘い

魔法陣ひいて召喚してみたが役に立たない悪魔みたいだ

靴下は温かいより邪魔だから裸足でいたいと女神は言った

本日は午前絶望午後まれに希望そののち憔悴でしょう

2018年3月9日金曜日

2017年冬くらいの短歌(1) 承認欲求は

青色に燃えて承認欲求は小さく馬鹿と答えて消えた

かなしいと言葉に出して感情の重さを測る冷たい目盛り

苗字も名前も国も捨ててみて幸福なんかを求めてみたい

影を踏む日なた植木の葉が揺れて一番負けがつきまとう日々

ざんこくな気持ち吹雪いて加速してみんな私を追い越していく

尊くもない若さだけ過ぎていき楽しさだけが余計に残る

眠れない人の光は薄暗く朝になるまで冷える回廊

気が付くと傷だらけになる手足まで大事だなんて自己主張して

化膿した傷に軟膏塗り込んで小さく生きる約束をする

味の無いつらら折り舐める帰り道どうにか一人どこへでも行く

2018年3月2日金曜日

2017年秋くらいの短歌(2) 革命闘志

肯定も否定も水から煮立たせて食べたらやわい鍋になるだろ

恋文か遺書にもなれる便箋に拝啓、あなたへ手紙を書くよ

死にに行く猫の道筋一人行く出来れば虎の歩幅で行こう

輪郭の甘い誰かを見つけ出す昼間に上がる花火みたいに

肯定も差異も全部は許せない油性マジック塗り潰す黒

君が呼ぶ私の名前のようなものこの世で一番きれいな響き

モチーフとして滅ぶ傷痍軍人にダムに沈む村、革命闘士

どうしようもない夜が来て朝が来てどうにかできるだけの毎日

好きになる人がたくさん出来たから来世で自慢できるねきっと

淋しいと口に出せたら幸せで冷蔵庫にでもしまう後先