2017年9月29日金曜日

過去の短歌 判子の様に

神さまの名前は何か問いしのち干からびていくアノマロカリス

星月夜屋根の上には雄猫が甘い声色腰骨撫でて

この指を食いちぎる気も無い癖に判子の様に歯型を残す

正解のアンサーミックスベジタブル壊れた安直諦観食べて

童話では人生讃歌悲劇的結末語る人の優しさ

よく冷えた身体の中に稚魚を飼う明日誰かを食い尽くすよう

社会人たるもの強さを芯にして夜更けの町の怪獣となる

私たちつながる先の不等号乙女友情均一ならず

真夜中に点けたテレビの外国語一人がもっと一人になった

個包装六片チーズのいずれかに仲間に入れてほしい週末

2017年9月22日金曜日

2017年8月の短歌(2) ワゴンセール

値引き品ワゴンセールで売られてるそういう風に生きてもみたい

口元はまとまりなくも閉じて行く愚痴罵倒痴話そして人の死

コーヒーの表面眺め目を見据えやたらに脈という語を使う

流されてしまうそういう人は嫌い流されやしないあなたも嫌い

ひとり夏復習のように閉じてみてグラスにダブルカルチャード注ぐ

きらいって言うだけだったら楽なのに(君は私を好きではないの)

錆色の個人の瓦礫積み上げるどうにもならない世界よ人よ

欲張り、と太った鳩を指差して笑った骨の目立つ月日に

自分だけ都合良い夢どんなにか浅ましくって卑しいのかと

2017年9月8日金曜日

2017年8月の短歌(1) うるさい口を

不良たるゆえん棒付きアイス噛む歯型残してそういう夏で

戯れに意味なく言いたいマザファッカー結婚記念日だったね確か

さよならを告げられる日はいつもより多め重ねる白粉の雪

好き勝手すればいいでしょ赤い髪我が物顔で歩む生活

嫌いなのそういう風に火を付けて煙草の煙くゆらす夕日

針に糸通す指先爪の先そういうとうとい時をあなたと

好きになる人が自分を好きなわけありえないわけないわけないか

神様に御礼を言って今日を閉じ悪魔に夢を売って暮らそう

上を向きかわいそうって可愛くてうるさい口をふさいでほしい

駅ホーム私の邪心を詰め込むに足りない幅の黄色いライン

2017年8月25日金曜日

2017年7月の短歌(2) 数十回かの夏だ

 
口含む花びらびらびら虐げる余計な気分で遊ぶ月曜

悪意ってかわいいねケーキ尖塔の苺を盗むようなレベルで

鏡見ていらない楔だと思う顔はいつでも両親に似る

重たさを強さと同じと思い込む底に溜まったただの泥でも

特別な存在として飴を食む好きに気高く生きれよすべて

ひび割れの激しい指を寄せ集め淡い卑屈な祈りをこなす

誰からも好かれるような顔をして愛されたいと口唇を噛む

持つ方と持たない方に分けるだけ湯むきトマトの歯型は崩れ

付箋紙の糊並み剥がすくっつける社会生活かろうじていま

しみたれた感情なんて焼き尽くせ死ぬまで数十回かの夏だ

銀色の靴を履いたら強風が背中を押すよ魔法みたいに

2017年8月18日金曜日

2017年7月の短歌(1) 大声がいい

処方箋のない淋しいを分かち合う野良猫だまりみたいな夜だ

出来合いのもので満ちてく胃袋と空っぽの頭越えて満月

融通の利かない便利な世の中で私だらけの善意を溶かす

雨よ風もっと急き立て強くなれ泣くのはできれば大声がいい

聞こえてるすごい雨だねそうだよね閉じ込められた1Kふたり

泥水の上澄み外面撹拌しいつか中指突き立てる日に

淋しいと口にするほど飢えてなく代わりに優しい夜食をたべる

近付いて死ぬような毒きみのこと好きだと思う自分が好きだ

誰もいない朝の浜辺で丸くなる貝殻拾いの旅に行きたい

他の人にぶつけられる程度その悪意もっと底から羨んでいる

2017年8月11日金曜日

2017年6月の短歌 あざらしになりたい

万人の上に雨風当たり散る弱い傘握り行く人もいる

コンビニで棒付きアイス買ってみて夜へ溶け出す我がディストピア

毎日を消耗してもしなくても勝手に死んでく夢見る時代

夏の部屋大量発生する私いかん容易に死にたくなっては

恋人の皮を剥いたら他人だと分からないなら泣かないでくれ

アア、なんて目覚めたような声をして忘れられたら死んじゃうくせに

あざらしになりたいかわいいふわふわの愛されがちな何かになりたい

傾いた月の角度に首曲げて自分の道を正確にする

思い出がきれいだったらそれだけで生きていってもいいと思った

苦しめよもっとみにくく苦しめよそういう価値の元にいるなら

西日浴びぼそぼそ生きて床にいる流しに枯れたあじさいもいる

生きるのはつらい、とか言う人肌に小雨は触れて絹にぬくまる

顔色の悪い魚と隣り合う車窓から見る水槽の雨

2017年7月21日金曜日

2017年5月の短歌(3) 妥協してよね


雲朽ちて黄色いだけの夕方を君を横顔眺めるだけの

好意って暴力みたいに、言うね、すき、きらいの方で妥協してよね

翌朝に湯を沸かす事を思いやりやかんの垢を落とす真夜中

楽しみは人によっては苦しいよ欠けた歯見せて笑う年下

眠るって業って安易に言っちゃうねあなたの横で眠らないのに

何もかも投げ出して飛ぶ白の中お前のことを忘れておいて

飽和する夜の騒ぎの真ん中で大事にケータイ蛍を散らす

夏の日の自分の影はくっきりと私の形の不安を示す

いつまでもついてくる犬猫みたい思い出なんかで美化をするなよ

2017年7月14日金曜日

2017年5月の短歌(2) 善人に紛れれば

特別な存在なのでそれらしくコンビニで好きなアイスを買おう

親しんだ罪悪感だけ道連れだぼやけた月が示す行く先

人混みの苦手な人と猫たちと意地悪な道ずるいふるさと

しがみつく肩の厚さに舌震え誰も等しく子供であった

愚かゆえ錯覚妄想くるわせて期待なんかをカラフルにする

母の背を超えて父の背超えていくそういう風に生きていければ

その辺の壁に体を擦り付けて自我ってものを放射している

善人に紛れれば混ざる性分を一人になってふつふつ沸かす

あっさりと見えなくなった未来たち煙草の煙は歪んで消えた

2017年7月7日金曜日

2017年5月の短歌(1) きみどりぴんく

詳細は省いて今日は曖昧に酒に体を溶かしてやろう

羽のない絶滅危惧種みたいだね恋とか愛とかふざけんじゃない

優しいは病気みたいだ君だってそういう誰かにとらわれている

眠れずに薄暗い部屋見つめてて蛍光塗料のきみどりぴんく

言いづらいところばかりが好きだった腕のくるぶしみたいなところ

毒を持つ生き物だったら良かったな切ったばかりの指の血甘く

米を炊く独り身なれば三合も炊いたら充分ご馳走である

街中の樹木ただただまぶしくて頭の痛みを助長していく

猫を抱く小さな腕に落ちる熱わたしの喉をごろごろ鳴らす

2017年6月30日金曜日

過去の短歌 エノテカ緑


終電車ブレーキの音悲鳴とか猫の声似て寝しなに溺れ

目の前に浮かんで消える不自由な魚たち傘重く濡らして

人のなか雑踏のなか歩いてく泳ぎの苦手な魚みたいに

柘榴剥く指の漿液きらきらと糸切り歯見せる彼は残酷

快楽は尽きる事なく上へ行く煮えた煮えたよ南瓜が煮えた

「お互いの身体を使ってお互いを満たすだけ」そんな事無い多分

雨の中発酵してく脳内ととんちんかんな君の鼻歌

起伏する心よお前を冷蔵庫入れて冷静にさせてやろうか

血を求め汗を求めて迷い込むエノテカ緑光る暗闇

好きだよ、と何度聞いても嘘だとか思えないでいる深夜25時

2017年6月23日金曜日

2017年4月の短歌 一番辛いリステリン

埋められるさみしさならばわかってる始末におえぬわがまま孤独

淋しいと言ってどうにもならないとわかってるのにどうにもさみしい

概念の毛布の中で嘘を吐く耳の中には海を飼ってる

月だって太陽だって沈むから不純はとても美しいのだ

安心を得たら今度は不安だねそういう人を好きになったね

わがままを言えどどうにもならないよ一人ことこと煮る春野菜

殴られた人の顔見慣れ夜は更けまともな顔はうつくしいこと

自らを誠実と吹く人の群れ恥じらい知らぬ人たちの群れ

春の夜迷子になってしまうから光る手首を見せてほしいよ

浅ましいそう思えるだけマシだとか路地裏夜更けふたりぼっちで

好きなのは一番辛いリステリンどうでも良いほど春は嫌いだ

自由にも体力のいる時代だね信じもしない占い見つつ

2017年5月12日金曜日

題「アルコールの歌」 歌会たかまがはら3月号

歌会たかまがはらさんで、2017年3月「アルコールの歌」というお題で
短歌募集をされていました。
気になった短歌をご紹介。

さんぐりあきれいなものは死んだってきれいなまんまだねサングリア
(西村曜さん)

おだやかに生きていきたい本名もビールの注ぎ方も忘れて
(Y川さん)

まだグラスなき生活にきみが来てマグカップへとビールを注ぐ
(辻聡之さん)

Wikipediaの酒のカテゴリを見るとワクワクします。
生と死、その間の生活につきまとうアルコールの数々、
希望でもあり絶望でもある長い時間に、つきまとう。
これ以外の組み合わせがないだろう、と思わせる言葉を選択して
切なくなってしまうくらいの歌ばかりでした。


自分は下記を投稿。

メンヘルがメルヘンに見え青い鳥探す足取りとろけて重く
カブトガニは血の半分を無くしても生きてる深夜そういう話
淋しさにバランスは無く壊れてく不協和音はラム酒の香り
水墨画みたいな夜に酒を飲み極彩色の馬鹿をしようか
セクシーな金髪美女に誘われ今宵も安い酒を買い込む

2017年5月5日金曜日

2017年3月の短歌(3) 等しくきれい

こころざす道はほうぼうあるけれどイヌノフグリは等しくきれい

大切にするって言ってゴミを見る目でめちゃくちゃに壊してみてよ

いつ死んでもいいやだなんて桜、背に笑顔だきみは嫌になる程

単純で陳腐な終わりあなたって白雪姫の王子みたいね

淋しいの形のままで痕になる誰もお前を愛しちゃくれぬ

幸福は抱き潰せる雛弱くって壊さずいるのは無理だと思う

傍らに誰かの熱を置くことを覚えさせたの誰だか知らぬ

ぜいたくや欲は独りを駄目にする甘い弱さは独りを壊す

しおりごと雨の匂いを挟み込む穏やかすぎてただただ怖い

2017年4月28日金曜日

2017年3月の短歌(2) 不機嫌、否決

 かわいそうかわいい私は永遠に一人でこなす楽しい世界

伏線を回収するよう動いたのこのサヨナラは至極当然

愛情を言葉にしたらおしまいと君が言うからおしまいにする

退屈を買えば卑屈も付いてくるそういう風に過ぎてく夜明け

役割を与えられ与えうなずいて人生全てをやり直せたら

冬が去りまたかなしさを忘れるよどこかに潜む誰かのなごり

幸せになりたいなんて知らないの妖怪人間ベムの結末

好きだって言えば交渉になる町であなたのことを嫌いと言えない

出汁のきく玉子焼きすら輝いてわたし由来の不機嫌、否決

2017年4月21日金曜日

2017年3月の短歌(1) 隠さない主義

謝れよ感情だけで説き潰す他人のことをとやかく言って

ゆるゆると緩慢な死を待ち受ける日々は酒ごと流してしまえ

本当に貝になれたら良いのにね雑に過ぎてく性愛のこと

なんらかの救い求めて行く道にあなたがいない選択をした

問いかけは面白いほど醜くてねえ今わたし笑ってるでしょ

住む町を決められなくて一人いるその場さすらう喜びだとか

押入れの中に入ったあの頃の私まだ見てる秘密の夢を

週末はあなたのために髪を結う内出血は隠さない主義

さびしいはやたら静かに噴火する煙草の先の火の色みたく

2017年3月31日金曜日

2017年2月の短歌(2) 虫の名前

借りてきた猫の手届く範囲さえ流しの下に潜む爆弾

慈しみ優しさ丸い気持ちたち箱詰めにして潰す習性

距離感は恋とか愛の境目かあるいは孤独、都合だけなら #短詩の風

さみしいか言葉よ言葉貪欲に外階段の段差を鳴らす

年取って死ぬの分かっているんだし濃縮還元してよ人生

悲しみや淋しさほどに激しくもない関係を終わらせている

ああ下弦月よ私の生活を身損ねてまで小さくなるか

好きだった虫の名前ももう言えずそのうち破裂するのだきみは

ほおずきの実鳴らす音をきしませて心に早く熱をください

降りもしない知らぬ人々住む駅に乱反射するパチ屋の明かり

非力でも死ぬ気で殴れば痛いのと弱ぶるように見せる暴力

正解がわからないから逃げ出すかそんな弱さを許してくれよ

2017年3月24日金曜日

煙草短歌連作「ヒンジリッド」

2015年3月ころ、SNSのTwitter上で、風橋平さんがまとめてくださり、
煙草をモチーフにした短歌アンソロジー「喫煙室」に参加しました。
当時の作品をこちらにも掲載いたします。

改めて、参加・取りまとめ頂いたことに感謝いたします。
たくさんの歌人が参加されていて、とても楽しいネットプリントでした。

「ヒンジリッド」

勇猛な少年期白く終わらせる震える指でくゆらす煙草

灰色に染まる空へと吹く煙わたし立派にクズをやれてる

腹の中飼ってる自由な被虐心うちら陽気なチムチムチェリー

我々の口から安易に出る紫煙死んでしまえとすべては呪う

形ある神に名前をつけてやる甘いガラムの火花を散らし

唇が淋しいのまま凝固して誰かの代わり求めるけむり

緩やかに滑落しては笑い出す、しゃれこうべ、それ、黄金バット

最後から数えてみてはバニラ味ほかの誰かのせいにしてみる

2017年3月17日金曜日

2017年2月の短歌(1) 春来やがれ

身体ならまだ痛みなんて感じるし生きてるだけの孤独中毒

整備さるる台所ゆえ立つ人の影おぞましき恋人の家

さみしいね冷凍の海老背わた抜く指の温度を奪って消える

安直な心理テストによりますとどうやらとっても不幸らしいよ

三枚におろしたはずの青魚ゴミ箱から目を光らして今

呪いって口に出したらダメってねあなたが好きだあなたが好きだ

早く春来やがれ花壇にいっぱいに紫黄色パンジー咲かせ

潮騒の音に他人の心音に馬鹿らしいほど安らいでいる

餌を得て喜ぶ舌見せ犬の日々尊厳だとか差異とは何か

後悔をさせてほしいよ猫背から骨張った手足震わせてさえ

壁薄く隣の人の生活にはみ出るような二人の時間

ねえ誰か呼んでみたくもなるような雪の向こうは何も見えない

2017年3月10日金曜日

テーマ「道」 うたらば第107回

たらばさんで、「道」というテーマで短歌募集をされていました。
採用歌で気になったものをご紹介。

歩道橋登れば無敵みたいだな信号の列をはるばると見る
(長月優さん)

間違ひに気づかないままどこまでも菜の花色の電車でゆかう
(有村桔梗さん)

時節柄、春を感じさせる短歌が多く感じられましたね。

夜の一本道の道路、虫の目みたいに光る信号機とか、
歩道橋の上の無敵感、すごいよくわかる。

身近な菜の花色って言ったら、西武新宿線の車両で
行き先を間違えても、まあいいや、行ってみよ、っていう
大らかさ、なんて愛するしかないだろう。

日常や感情を切り取って共感をさせる歌は強い。そして好きだ。
真摯なことを見ていると幸福である。

自分は下記を投稿。

道に吐く唾は汚く飛び散った冬は間も無く誰にでも来る

撃鉄を起こせ我等を阻むもの蹴散らせ行けよ葉桜の道

道に咲く花々吐瀉物たかる鳩わたしの願いは生きていくこと

2017年2月24日金曜日

過去の短歌 白いとこだけ

イバイバの反対、なんて最後までおどけて笑ういとおしい人

八月の嵐みたいな君を抱く 愛おしい、否、苦おしい、否

銀色の光あるいは幸福な子供時代の寄る辺無い夜

ぐちゃぐちゃになってやろうと飲み過ぎてうるさいだけの帰巣本能

きょう君に声をかけると決めて踏む横断歩道白いとこだけ

100人中1人と私しかいない肯定の中走れペガサス

腐敗した再生産を繰り返す寝たい抱きたい何も言わない

こんなにも優しい人は溢れてて私の欲しいものは足りない

形あるものなら君に見えているジグソーパズルのピースは足らず

生きている間は死ぬとか言わないで缶詰チェリーを溶かす唾液に

2017年2月17日金曜日

2017年1月の短歌(2) 副流煙

淋しいと口に出したら仕舞いです独立済みの大人であるゆえ

人混みの浸透圧に耐えかねて副流煙をひたすらに吐く

八月の積乱雲のような雪あなたはいつも夏を連れてる

上等な孤独だこれは改札で好きでもないのに見送られてる

毎日の自分勝手に吐き気してショートホープに希望を詰めた

世の中のあらゆる事を試しても死ぬまで淋しい人間だろう

中毒のように一人になりたくて子供のようにさびしくて泣く

真夜中で一人で叫ぶ淋しいと残った酒にたかる蠅たち

どうしようもない日々これは仕方なく五本の指を持つ人のあざ

2017年2月10日金曜日

2017年1月の短歌(1) 海を描く日

小説に描けぬような恋をする卑しさ屈折讃えよ君よ

壁紙を全部オリーブ色にして一緒に不幸になってあげるよ

浴槽のふちに残った尻の跡まだ実体を持ったにんげん

終電は逃さぬ女の足早く幾多の塵を蹴散らせてきた

終電の窓に映った白い顔嘆いた所で変わらぬ日々よ

苦しいのかなしいの全部お仕着せる思考停止のお姫様がた

親指を浸すシアンのインク壺だれかの為に海を描く日

自画像に影を入れ込む朝化粧後ろ暗いから生きていけるの

私小説映画半券しおりにし窓に貼りつく雪の花々

二階席中華料理屋ひとびとは階段、料理はエレベータより

2017年1月20日金曜日

2016年12月の短歌 順列に並ぶ

苦しさと悪意をともに持て余す引き千切れるのは私かあたし

傷だってお気に入りなら許されるそういう風に生きていきたい

紅を差し吐瀉物だらけの町を往く子供みたいに雑に抱かれに

耐えられるまだ耐えられる甘えたの代わりばんこに消える足音

何度目の過去にいったいなるだろう目の前全部きみになるだけ

順列に並ぶイチョウは空区切りどうにもならぬ冬がまた来た

誰も皆幸せになる結末を望んだだけの不幸せ者

ゴミ溜めになれればいいよ欲しがって要らないものを私にください

新しい元素を話し始めてるなまぬるい熱を一息に飲み

感情と理性パターン組み合わせ幾ら試せば許せるだろう

そうやって寄り添うふりで理解する価値とは常に欲の上だと

2017年1月13日金曜日

テーマ「先生」 うたらば第104回

たらばさんで、「先生」というテーマで短歌募集をされていました。
採用歌で気になったものをご紹介。

カエサルは何度でも死ぬ世界史の教師の声でもう一度死ぬ
(大橋春人さん)

ゴリラとふあだ名の教師は胸の花ふるはすやうに校歌うたへり
(泳二さん)

学校の先生って尊敬と侮蔑の範囲が広かったけれど
共通しているのは、子供たちより先に生きた大人がいるという事。
十代の恥ずかしい全能感を喚起されてしまう。

自分は下記を投稿。

なめらかな文字に記され恩師の死手向ける冬の背中の寒さ

安っぽい証書に太く記される仰げば憎し我が師の恩を

息を吸うように嘘つく人といて愛情なんて教えてもらう

2017年1月6日金曜日

過去の短歌 砂絵を描く

ゆるす、ゆるさない、ゆるすか、ゆるさない、鮮血の様に花びら散って

どうしようもなく淋しいよだからほらお前の唾で砂絵を描く

目茶苦茶にしたいさせたいしてもいい言葉の刃空回りする

足元へ許しを乞う視線逸らしお願いだからわたしを見てよ

固執妄執の激しさ知らないで笑顔振り撒くお前が嫌い

加速する目の前の世間だけやたら猫舌の人追い回してる

服脱がす誰かに呪いが届くよう可愛い柄のネクタイ選ぶ

仕事場の高層ビルの夜景から見るもの全部滅びればいい

毒青いその舌の根が乾くころ思い出させてやる後悔を

嘘つきは舌を抜かれるエトセトラ与える罰を考えている