2016年12月23日金曜日

2016年11月の短歌 トゲトゲの傷跡

靴跡の残る雪みち泥を避け尽くしたところで言葉は足りぬ

心臓の話をしてよトゲトゲの傷跡、刺青、プールの話

人々に見下されるのは慣れている安全位置と知っているもの

もう今日は酷い事しかしたくないラーメンライス餃子を追加

生活の方位磁石が壊れてる一人始発で向かう江ノ島

手の届く範囲で終わる戦いで血を流すためささくれを剥く

愚かかつ馬鹿にもなってしまったら見捨てて貰える期待をさせて

電柱が人間に見え月が見え夜はどんどん傾いていく

薄氷の上に成り立つ平和ってどんなものだか教えてくれよ

地球外生命体と接触す我レ只今ヨリ恋ニ落チタリ

三日月を撃ちつらぬいて落ちてくる僕のポッケのビスケットたち

結局は他人洗濯物たたむ回数なんて数えながらも

冷え過ぎた指、膝、過去の楽しみは電子レンジでチンをするのだ

幸せになれよ出来れば片耳のピアスだけ失くす呪いにかかれ

2016年12月16日金曜日

2016年10月の短歌(3) びらびら揺れる

会話劇メトロノームの頷きを飽きて煙草に火をつけドレミ

乱暴でいたいと思う脆弱な心を誰にも見せないように

自分とは違う、だからね本当の生殺与奪とかを知らない

人肌のほどと調理の指示があり要らぬさびしさ思い出させる

拒絶ならざらざらした目で示してる飢えているのは一人ではない

あ、やばい、淋しい寒い、ポケットに突っ込む手指の爪は割れてる

おもちゃ箱ひっくり返し床にいる自分も何も混ざり合うから

他の人の物差し幅に余り過ぎびらびら揺れる自由な手足

充血の無い白目黒目境い目に反射して映る馬鹿な私を

淋しいか、否、悲しいか、否、々、々、自分の溶ける場所を欲する

優しいと好きは違うと知ってるし泣いているのはただの病気だ

お綺麗な立場の人を汚したく反抗的に吐くクソくらえ

浅ましい共犯者の目青白くいつまで待てばさびしくないの

2016年12月9日金曜日

2016年10月の短歌(2) 履歴を消して

瞳孔の開き見てたらもう夜で気持ち全部もずさんでいいよ

万物の流転解脱や諸々の垣間にあなたがいるのが嫌だ

大人でも終わりの定義が分からない尊いものを分け合いながら

大小の肉体美観ゆるゆると価値観愛を露呈し尽くせ

白シャツの襟首汚れ生きているあんたが残した履歴を消して

言葉すらどうしようもなく吐き出せず、かみさま、なんて口にしてみる

君宛てにねだる言葉を吐けるなら泡になっても良いと思った

寿命って上手い事言うそんなにも愛でたき事に尽くす命を

コンピュータグラフィックス的完璧な日を容器の中うかがっている

蜂蜜にピーナッツバターあんずジャム過剰悪趣味あなたが好きだ

ゆきずりの町で目の合う野良猫と罵倒、私のためな気がして

産まれても孵らぬ卵を温めるどうして心なんかがあるのか

眠れずに羊数える七匹目あなたは眠れているのだろうね

2016年12月2日金曜日

2016年10月の短歌(1) 祖先の努力

満月はマリービスケットのお味新月のたび君に吐く嘘

欲しい物要らない物を書き上げて全部あんたで上書きをする

音楽のドレミファソラシド例えばさ声を分類しないで今は

陸上で息ができない気がしてて祖先の努力恨んでみたり

悲しさや苦しい細かい感情は誰も開けない冷蔵庫の中

うつくしい露悪と醜いたしなみと私が選べたあらゆることを

全・肯定、私あたしに我輩に第三者的期待をかける

怖いの、と怯えた目をして見る魚、あるいは神と誤ってた日

動脈の上に匂いを積み重ね畜生なりのおめかしをする

炭酸の抜け切るコーラ片腕に耐えられぬ重さだれかの呼吸

バラバラのわたしきちんと纏まった私まだまだ親指しゃぶる

酔い口に言葉の価値を知るからに絶対言えないただ一言が

長袖の長さが足りず笑い合うそういう風に生きあえている