2016年11月18日金曜日

2016年9月の短歌(2) 嗚呼あゝ恋とか

軽率に箱を開けては老いていくそういう種類の依存性だよ

約束はしない守れず飲み込んだ嘘の尖りは肋骨を刺す

半熟の目玉焼きなら飽きているハードボイルド生きてみたいし

悪い夢見ては忘れる彼岸にて震える指を千切りたくなる

貪欲になれたらいいさ甘栗の皮を剥くほど禿げるマニキュア

不器用と名前を付けて分けるだけヒト科ヒト族さびしがり属

水槽の金魚が溺れているところ見てみたいよねあたしは見たい

締め過ぎて鬱血してる指の先ほんとにいきることとはすてき

ひどいこと考えるとき木蓮の厚い花弁を裂いてしまえば

快、不快、誰かを呼んだ名前なら慈しみとかをまぶしてあげる

お祭りの派手な行列避け歩く日差しは誰にも等しく白い

喉奥で言葉を銃に変えたらねカルピスの海で溺死をしたい

休みなく夜の憂鬱積み上げてパンケーキみたくふわふわ重く

長すぎるスカート裾は膝隠す嗚呼あゝ恋とかどうするのだか

これまでの不謹慎から想像し信用ならない爪先の向き

2016年11月11日金曜日

2016年9月の短歌(1) 冷凍ピザを溶かす理由

二人だけで通じる名前で呼び合ってお墓の中で交わす約束

夜に降る希望は鈍く輝いて私を明日に生かしたりする

きれいだと汚れた手で言うごめんねと天秤にかけ残るさびしさ

軽薄なひまわり黄色目を焼いて知らぬ誰かの思い出語る

水色のエナメルの爪夜光る両生類になれるつもりで

千一夜数えて眠る例えとか冗談だらけに過ぎる宴会

悪い方悪い方へと蛇は行くここより良いならどこへでも行く

つらいとか淋しいとかをささやいてバターコーヒー浮かぶ満月

強すぎる気持ちはたぶん恋じゃない煮立ったジャムの果実を潰す

舌の上慣らす軟膏罪悪の炎症に効く白い苦味よ

鳥として生まれさえずる籠の中ねがえば竜になれたとしても

夜きゅうに急にさびしくなっちまう冷凍ピザを溶かす理由は

不用意な発言をして嫌われる準備はいいかさあ始めよう

真夜中の布団の中で考えるどうして迷子になっているのか

道に吐く唾は汚く飛び散った冬は間も無く誰にでも来る

埋めるのが空腹なのか空虚かも分からないまま迎える夜明け

2016年11月4日金曜日

題「曜日」 歌会たかまがはら9月号

歌会たかまがはらさんで、2016年9月「曜日」というお題で
短歌募集をされていました。

気になった短歌をご紹介。

木曜の夜に生理を終わらせて えらいでしょ、ってビールをなめる
(腋の下舐め子ちゃんさん)

きみは鯵ぼくは鮫だと言う子らが泳いで渡る葉月水曜
(文車 雨さん)

全体が薄暗いのも寒いのもすべては今日が土曜だからだ
(Y川さん)

生物だから気候体調あらゆる事象に精神は影響するはずだけれど、
近代の持ち出した曜日って概念により一喜一憂するの滑稽。
個人によって色んな意味があって、想像が膨らみ過ぎる。

自分は下記を投稿。番組内採用ありがとうございました。
どうでも良い事ですが、私は甘いケーキが好きではありません。

金曜日にくいつらいが連なって甘くて重いケーキになるよ

例えばの話をしては滑り行く淡い輪郭曜日のすきま

日曜の廃品回収甘い声どうかわたしを連れてってくれ

世の中の日曜の夜の死にたさを濃縮還元ジュースにしちゃえ

永遠を願え十三月が来て銀曜日には王様になる

日曜の朝から開ける白ワイン何ならみんな幸せになれ

個包装六片チーズのいずれかに仲間に入れてほしい週末