2016年10月28日金曜日

雑記 リバーシブルリバース

※暗い。

ユミちゃんが亡くなった。

ユミちゃんは田舎の裕福な本家の子供である。
幼い頃、本家に行けば、ユミちゃんのおさがりが貰えるし、
おやつはあるし、あったかいし、動物がいるし、ユミちゃんと遊べる。
男系一族の中で、少女はユミちゃんと私しかいなかった。

成長して雑誌を読むようになり、色んな服やブランド名を知った。
ユミちゃんは変わらず色んな服をくれる。ショップバッグに入れて。
私の修学旅行の時は、ブランドのリュックを貸してくれた。

ユミちゃんはしっかり者、美人で社交的で頭も良く
小さい頃から夢を持ち、学校卒業後も夢を目指して勉強していた。
親戚の中ではユミちゃんが主役で、水準だった。

私が都心で総合職として働き出した折、ユミちゃんの結婚を知った。
ずっと目指していた職業は諦めて、婿をとって主婦になったらしい。
本家の家長は金喰い虫が片付いた、と嬉しそうに笑っていたそうだ。
その内、ユミちゃんが子供を出産したと聞いた。

教育ローン返済の目途がたって生活に余裕が出来た頃、
ユミちゃんの危篤連絡があり、その三日後に亡くなってしまった。

通夜の大きな会場に興奮して、ユミちゃんの子供は走り回っていた。
200人くらい来ていた弔問客は、皆が泣いていた。
死化粧の口紅は汚いオレンジで全く合っていなかった。
葬儀に出るのは仕事を理由に断った。

一時間に一本しかない帰りの新幹線を待ち、
駅で煙草を吸ってたら、喪服を灰で汚してしまった。
代わりに私が死ねばよかったのに、なんて事を思った。

2016年10月21日金曜日

2016年8月の短歌(3) 光るレタスと魚

望むらくはダリル・ハンナの美しい前転倒立回転飛びに

壊しても尽くしてもなおまだ足りぬにんげん一人幸せになる

LED電球だらけの街なかで夜は絶滅したのかも、ねえ

狂うほど頭の良すぎる友達と見上げた空に落ちていく月

ペパミント茶葉はまずくて匂い立ち吐き気どころか思考を止める

きっと今思ってるような底よりも深いところにいるやも知れぬ

手を引いて連れてく菜の花畑にも暗い土色消えない自損

えげつない角度で曲がる月を見る私はここで笑ってやってる

強欲を押し付けて愛と呼称するそんなものなら一生いらない

あわよくば甘い死、よしんば怠惰の腐乱にて、高層ビルの上に赤い灯

真夜中のスーパーマーケットへ行こう光るレタスと魚を見よう

2016年10月14日金曜日

テーマ「恋」 うたらば第100回

たらばさんで、「恋」というテーマで短歌募集をされていました。
開催100回なんですね、おめでとうございます。
多忙ながら継続する運営者の方、尊敬の念しかないです。
さて、採用歌で気になったものをご紹介。

ラブレターびりびり裂いてあたまから明るいだけの雨降らせたい
(黒井いづみさん)

ひまわりが光に向かって咲くならばわたしはきみに向かって咲きたい
(九条はじめさん)

真四角の窓からあなたが見えたとき喫煙室が聖域となる
(稲垣三鷹さん)

恋をしている状態って、一種の精神疾患罹患状態と聞いた事がある。
真偽は知りませんけれど。
両想いよりも片思いって、醜い癖に美しいから手に負えない。


自分は下記を投稿。かわいい恋がしたいですね(棒)

与えるは愛で欲しいは恋という壊したいのは何だというの

夏が来て気が狂うような夏が来てまた気が狂うような恋をするのだ

欲望の強いばかりが超過して君をいつしか潰すのだろう

人のいない油のような海にいて溺れてしまいたいだけの恋

さよならや別れようとかその口で言っても多分甘く聞こえる

手に持った花は大体干からびるそういう求め方しか知らない

2016年10月7日金曜日

2016年8月の短歌(2) フィッシュフライカレー

箱詰めになって気持ちよ左様ならどうなればいいか知らぬ夕顔

ラジオから二局の隙間ノイズだけ流れて消えて黄色く歪む

許可制で得ているような怒りとか吐き気そのまま南を目指す

誰にでもばれそうな嘘へたくそにリストカットは瀉血の一種

がちがちの向上心を持たぬから赤信号機の麓で待つよ

とてもとてもとてものついた悪趣味で炭酸水に好意は溶けた

何がしか溺れるような夢を見て叫べば全部台無しになる

痛い時生きてる愛を受けている錯覚できる鈍った頭

自分とは違う形をしているか肩甲骨の向く上の先

見送りの姿かたちは美しく喫煙者たちは赤目を晒す

人格者だらけの部屋の壁壊し澱みを全部流してしまえ

午前2時ココイチフィッシュフライカレーあらゆるものが私に優しい