2015年11月27日金曜日

2015年10月の短歌(3) テフロンの

どれだけの汚い言葉並べ立て傷つけてても寄り添う孤独

多分もう100年後には死んでるし分かってるけど今は泣かない

沢山のかもしれないを紐つなぐ仮定はゆらり夜を揺らして

きっとうまくいくのだろうから無視をする負けても勝っても結果は同じ

並べてる似たような花コスモスの色はあかいろ口紅のいろ

低気圧の影響により舌を打つさもしいだけのバッドトリップ

リトルリトルリトルアスホールだってさ目の前にいるどぎつい罪人

公園で寒いと言って生温いココアの缶を分け合っていた

ぽろぽろと落ちる発泡スチロール守られるのは風化の速度

夢だとかまぶしめの言葉ぶつかって傷つけている、ひとり勝手に

さいていだすきだきらいだこわいんだ最適解を選べ矛盾に

テフロンの剥げた鍋上バター溶け少しばかりの幸福を得る

歯を磨き眠る程度の分別で吸わないたばこ揉みくちゃにして

2015年11月20日金曜日

2015年10月の短歌(2) サイコロの目は

この世から二人ぼっちを取り下げて一人さみしくひゃんひゃん泣くよ

絶対に嘘嘘睫毛目に入り狂わせるほど涙の応酬

嫌いなら嫌いと言えば完結の子供時代と私のいまと

あらかじめ知ってる嘘に網を張るよく欲望ぼうよく茫洋と

あたしって言い遣る個人の自尊心満員電車でもみくちゃになる

真昼間の浮かぶ気持ちに帆を立てるどうでもいいのどうでもいいの

幸せになりたいなんて不幸にも憧れている不良でもある

笑っててほしいと思う浅はかに水で作ったココアはまずく

迷うほど強い何かは持ってないただわがままな大きな子供

すごろくのあがり見えないままで振るサイコロの目はぜんぶ白色

犬の歯で噛むと血が出てしまうから目付きの悪い右目でにらむ

浮かんでは消える飛行機雲のなか私の骨は柔らかになる

冷え過ぎた指はどんどんぬるくなる他人と自分の汚れに満ちる

2015年11月13日金曜日

2015年10月の短歌(1) イマジナリーフレンド

都合よく愛想笑いを振りまくよカスミソウなら足りないのだと

祝福をしてよ拍手も喝采に腕がもげるほど掴んで逃げて

乾かせば何もかも同じ砂になる会えないからの妄想は揺れ

イマジナリーフレンドふたりぼっちでのうるさく過ごす夜の憂鬱

信頼の形は甘辛醤油味今日は玉子を崩してもいい

水星と冥王星の違いすら都市はわからず眠らないまま

酒に酔い煮込み料理を延々と作り続けて笑う休日

始発にはまだ早い駅座り込むかすか聞こえる母親の声

自主的に与えることが可能なの赤青黄いろ綺麗に痛む

石けんの泡ふわふわに手を洗うまともに生きる自覚がほしい

もう少し粘ってみればあっさりと跪いてもやらなくもない

前提にあるものとして眼球は唯一舐める為の臓器で

明るくも毎日小さく死に向かう誰かをきっと捕まえるから

2015年11月6日金曜日

過去の短歌 ダンスホールだ

情報がいくら氾濫していても当事者にしか分からない事

人生を糞のようだ、と言う君と喫する酒はほのかに甘し 

車中にて扇子を振りし若人よ猫の目蛇の目子鬼たちの目

恨めしくアブラゼミ鳴く猛暑日に人を乞う乞う人を恋う恋う

足元に転がる西瓜夏の宵紳士の呻く生首光る

俗世間という語の似合う我を見て犬の吠ゆるは陶然と「死ね」

太陽を見詰めて思うかなしみは涙の出ない訃報に似てる

淋しくて最終電車を待つ人は腕を振らせて擬似のお別れ

ご機嫌な青年の歌響く夜 駅のホームはダンスホールだ

制帽の白線外れ梅雨の頃つるりと舐める膝の裏見る