2015年10月30日金曜日

2015年9月の短歌(2) 脊髄も

いくつかの駄目パターンを練り出して焼いて美味しく食べてしまおう

秋になりどれだけ自分が馬鹿かって知らしめたくて電話をかける

次の日の下ごしらえをして眠る少しくらいは幸福でいい

使わない筋の固さを思い出す野ばらの匂い混じった汗は

煽らねばならない時もあるわけでテンション高めに叫ぶよ好きだ

おおぜいの人に囲まれ手の甲は泥に汚れてキスも出来ない

内臓も脊髄も全部汚れてて丸洗いしてやりたいくらい

守らねば守られるだけの獣でひとつ自分で決めたラインを

淋しくて誰かに助けてほしいって言えない誰かは誰なんでしょう

眠れない人がどうにか泣かぬよう淋しくないよう電気を点ける

電子音甘い人工音楽に頭はとうにおかしくなって

歩道橋揺れる視界を跨らせ月を目指すと言えばいいのに

2015年10月16日金曜日

題詠blog2015の事(7)

061:宗
ここへきて宗旨替えかと笑ってるあんたが好きだ阿呆みたいに

062:万年
建て付けの悪い窓から差す夕日万年床は棺桶になる

063:丁
暴力と甘えたさんを抱き合わせ二丁拳銃引き金を引く

064:裕
余裕とかハナから無くて君煽る追いかけっこは今日も続いて

065:スロー
コールスロー添えて肉屋に娶られて無害な笑みを振りまくだけだ

066:缶
好きなだけミートボールを詰め込んでトマト缶には夢が溢れて

067:府
右足の小指の爪は消失し政府は何をしてるのだろう

068:煌
煌めいたはずの夢路の果ての果てあとは気楽に墜ちていくだけ

069:銅
夏残り赤銅色の子供達いつか大人になれますように

070:本
猛禽のような目をして本当は泣きたいことを隠して君は

2015年10月9日金曜日

2015年9月の短歌(1) 肋骨の

後悔をしてほしいならしてやるさ鼻血みたいにあまい鉄味

肋骨の檻だと言ってあたしらの中身は砂糖菓子なのである

そんなものが愛とかいった形なら迷わずくれよたっぷりくれよ

桂剥きされてるみたい削がれてく季節を跨ぐ雨の降る夜

猥談をフードコートでするように赤くならない人ふたりきり

痛いのはどこにいたっておんなしで例えば君を選ぶということ

便宜上名付けられてる名を呼ばれ痛みは何か覚え始める

豚の餌呼ばわりされて屑でいる矜持はあたし誇っているよ

生きている資格がほしいと思うのでできれば優しくありたいのです

また明日に固い猫背のわたし行く空虚はどこが果てなのだろう

ネガティブで筋肉質な孤独だけ宵の鴉に混じって吼える

2015年10月2日金曜日

題「ホーム」 歌会たかまがはら9月号

歌会たかまがはらさんで、2015年9月号「ホーム」というお題で
短歌募集をされていました。採用歌で気になったものをご紹介。

動き出す車窓はホームでタバコを吸う女をすぐに置き去りにした
(工藤吉生さん)

段々と家具が揃ってだんだんと僕の部屋ではなくなってゆく
(牛隆佑さん)

ホームレスの人が何かを呟いた。俺にではないことを願った
(飯田和馬さん)


温かな家庭を描くと思いきや、この切れ味。
家と職場の往復である駅もある意味ホームなんですよね。
このお題は家、じゃないところが肝で、突き詰めてみると面白い。

自分は下記を投稿。新しいのは作れなくなってきた。
即詠の過去短歌ばかりになっている。個人的に好きなのは多いけれど。

週末の電車はいつも遅れてて私は家にたどり着けない

帰る家無いと応えてかたつむり嘘には嘘を抱く君がいる

一卵性双生児みたく抱き合って死ねたら次は家族になろう

じゃあね、って鶯谷の駅ホーム並ぶ人たち人形の顔

駅ホーム先頭で待つ人たちへ墨黒の羽背中に生えて

ご機嫌な青年の歌響く夜、駅のホームはダンスホールだ