2015年8月28日金曜日

2015年7月の短歌(2) サングリア

温かい黄色い毛並の犬っころ欲しがるだけの淋しんぼたち

雨が降る嘘つきみたいな陽気さであんたは傘をくるくる回す

あぜ道をどれだけ早く走れれば台風の目になれるのだろう

祈らせてどうか神様仏様信じてなんかいないけれども

選択肢だらけの街を通過して可哀想な人誰かを請うて

絶対は赤くえぐれて跡残し頭の中の野卑をぶちこむ

臆病な自尊心だと笑ってる嫌なら全部壊してしまえ

もう少しだけでいいからだまってて聞こえない声消えない罵倒

頭ならじゅうぶんおかしい知ってるよ猫のたくさんいる町で死ぬ

サングリアオレンジ壊れ物のよう赤紫の腕の手のあと

がりがりの背中は揺れる爪を切る生きてるだけで上々だとも

2015年8月14日金曜日

題詠blog2015の事(6)

051:緯
信じるか信じないかは別として同じ経緯の恋情がある

052:サイト
泣き汚す私の涙は溜まってくあんたはいつもダムサイトのよう

053:腐
腐葉土の中にいたって僕はきみ奪い尽くして食い荒らしたい

054:踵
音楽が鳴るようなほどのキスをしてカスタネットを叩く踵は

055:夫
大丈夫まだ生きていて良い筈だ青いトマトはピクルスにして

056:リボン
ほどくなら赤いびろうど縞リボンしまってあった古い約束

057:析
口開けて落ちてくる餌美味しいね何も知らない他己分析へ

058:士
貧弱に泣いてもない歯科衛生士押し当てられる豊満な胸

059:税
大半が税金だからこの紫煙億万長者の味がしている

060:孔雀
白孔雀刷り込むだけの自己否定一生懸命放つ真昼間

2015年8月7日金曜日

2015年7月の短歌(1) 指切りげんまん

欲望は箪笥に全部詰め込んで衣替えまで見ない振りする

嘘をつく容易なことで騙し合う傷をつけない愛とは何か

ずるさより可愛さだけが欲しくってぐるぐる回す透明な傘

魔法陣作る間も無く出る煙こんなに容易に心は枯れて

今すぐに死んでしまいたくなるような群青深い夜の奥底

週末の電車はいつも遅れてて私は家にたどり着けない

灰色の風は強がり押し上げる隙間を塞ぐだけのこの身を

綻びてしまうくらいのお約束呪いをかける指切りげんまん

十字路で悪魔と契約してもまだあなたのそばにいたいと思う

新しい生き物になる何もかも許せるような生き物になる