2014年12月26日金曜日

題詠blog2014の事(10)


091:覧
必要な力は誰を汚すもの割れた鏡をご覧なさいな

092:勝手
つまらない孤独の理由考える一人で勝手に泣き笑い顔

093:印
恐ろしい結果は叫んで逃げ出して夢にまで見る印をつける

094:雇
終電に溜息ばかり入り混じる蝉に似ている被雇用者の背

095:運命
さあ早く運命並みに安っぽい理由を寄越せ僕と僕らに

096:翻
シャルロッテ翻す黒スカートの端から覗く高慢な月

097:陽
水色のプール塩素の匂いして見えぬ太陽あなたを想う

098:吉
丸い爪いつくしみとは何なのか吉凶夢見る夜の辻占

099:観
泣くだけで容易なんだと思う日々私たちには諦観がある

100:最後
最後には笑って綺麗に別れるかお金ちょうだいさもなくば死ね


何とか年内に完走できましたね。よかったよかった。

2014年12月19日金曜日

題詠blog2014の事(9)

081:網
網棚に並ぶ不始末黒黒と願いましては失踪したい

082:チェック
思い出は綺麗と言えば嘘つきだギンガムチェック揺れるブラウス

083:射
牛刀に明かり冷たく反射して今宵は月を賽の目に切る

084:皇
幸せな皇子であればルビー色血走った目で愛を乞うひと

085:遥
マンモスが遥か昔にいた頃へ眠れぬ夜のおとぎばなしを

086:魅
何も見ず魑魅魍魎を書けるってそんな顔して言う事じゃない

087:故意
運命は意図的にして故意犯であなたの髪は光に透ける

088:七
深夜帯ルームナンバー七〇二録音された嬌声響く

089:煽
柚子の木を揚羽幼虫殺してく芳せ煽る欲深い夏

090:布
おふとんにわたしやらかくくるまれてにげられないね冬眠しよう

2014年12月5日金曜日

2014年11月の短歌 ベトナムコーヒー

同情の無神経さは軽薄でささくれるだけ心があれば

旅情など知る由もなしこぽぽぽと落ちるベトナムコーヒーの味
#sandpitさんへ

露出狂めいた夜半は過ぎていく理想の中の自分はどこだ

週末を無益に過ごす贅沢さカルボナーラはうどんで作る

償うと贖うなにも違わずに消毒液に哺乳瓶埋め

甘塩の鮭の肉から骨を抜く何かは何かを愛するという

耳の中垂らす唾液の海があり別れの度に消える潮騒

始発待ち靖国通り迂回する裸足の群れに私はいない

代替でいいと思った脱脂綿濡らす唾液はやたら甘くて

メロン食う歯型を残すオレンジに腐りかけてく純情少女

水族の生ぬるい足かぞえみる指の合間に目立つ水掻き

一生のうちまばたきで目を瞑るその数回を無限に愛す

何もかも分かってるって言わせたい赤い靴裏かかとを鳴らす