2014年3月28日金曜日

テーマ「春」 うたらば第58回

うたらばさんで、「春」というテーマで
短歌募集をされていました。採用歌で気になったものをご紹介。

視界の端やぶられたかと思ふほど溢れくるなり菜の花の黄
(飯田彩乃さん)

でも僕は花ではなくて雪解けの君を汚せる泥になりたい
(円さん)

ふきのとう素揚げしてまだほろ苦い 波打つような君との時間
(窪田圭さん)

色鮮やかに切実に、劣等感と憧れがないまぜで、
しかしそれだけではない。
春は喜びの季節とも言われますが、個人的にそんな事は、ない。
切り取った情景が脳内にぐわっ、と広がる歌たちです。

自分は下記を投稿。採用して頂けたのが嬉しくてビールを買いました。
800首近い選歌をされている、と目にし、量よりも質、
選歌基準をよく読んで投稿しようと反省しました。

青春に静かにバグるわたしたち甘くたやすく引き金を引く

どうせなら嫌な女になってやる(都合の)いい子卒業決めて

糞寒い三月に舞う花びらは誰を泣かせてしまうのだろう

芽キャベツは目玉と同じ固さだとシチューをつつく君のいる春

恋は死に聖者の顔で春を待つ雪が溶けたら土に埋めよう

またわたし君の強さにつけ込んで桜並木はこんなにきれい

歌わずにいられぬ春の泥を踏む眩しく駆けるパステルカラー

屈折を愛せるほどに甘くなる春よ私を突き抜いていけ

2014年3月14日金曜日

2014年2月の短歌 投稿・企画系

下からと左側からねだるキス砂漠の中の君はオアシス
(さよなら泥短先生)

じゃあね、って鶯谷の駅ホーム並ぶ人たち人形の顔
#ラブホ短歌企画)

どの部屋を選ぶかなんてはしゃいでるどうでもよくてうなじを見てる
#ラブホ短歌企画)

こっそりと普遍概念噛ませ合うそういうお前好みのタイプ
ときどき歌会

もう黙れもっと早くにきみのこと知ってたらなんて嘘でも言うな
#短詩の風企画)

夕立が白いシャツたち濡らしてくあなたの腰は鋼のようだ

コンビニへ借りたジャージで出かけてく腰骨くるむ熱い手のひら

想像のなかでは自由誰も彼も一枚二枚服を脱がせる

幸せと思い込ませて頂戴な退屈しのぎのスクール水着

左手に泣かない女に重たくて泣く男には軽すぎること

2014年3月7日金曜日

2014年2月の短歌 ダッフルコートの

捕まえて撫でて触って傷つけて所有者なんかでいたくはなくて

正しいの定義にもよる悪党になれるか試す制服を裂く

雪みたくポップコーンを散らばせるあの子のように泣き叫べたら

針山の綿の中身になればいい突き刺す冬の墓標になろう

寒くって震えるまつげ雪弾くダッフルコートの似合わないひと

雪を踏みきしむ足音並べても向う側では他人の僕ら

電線の雀のように身を寄せて信頼なんてしてはいなくて

強い人弱い人みな雪のなか選ぶじゃなくて奪い去ってよ

道端のゲロを避けては傾いて重たい夜へ作る穿孔

千代紙の羽根の丸こい折鶴の傾き軽く姫たち笑う

借り物のパジャマ後ろ前逆で尻尾があればちょうどいいのに

白服のサクリファイスと云ふ勿れ舞い昇りたる少女属性

鉄塔をくるくる回る子供たち死は緩慢な光るたてがみ

どうせならキャトルミューティレイションの話をしよう雪が止むまで

一卵性双生児みたく抱き合って死ねたら次は家族になろう

赤マルの例えば灰を手に取って十字を描く夜は毛羽立ち

スティーブン・キングの絶賛するような子供時代を語れずにいる

吸いたくもない煙草吸う月曜日甘露求めぬ私は蛍

あいつらは人を攫いにやってくる眠れぬ夜の毛布となって