2018年4月20日金曜日

2018年2月くらいの短歌(2) ミモザばかりの

暗がりの中で君の手しらじらと光って踊るそういう夜更け

透明のマニキュア塗って乾くまで原始両生類の顔して

替え芯を買えば幾多の文字たちが小鳥になって飛び立っていく

死ぬのなら怖くはないよそんなことミモザばかりの花屋の前で

選ぶなら玉虫色の夢でなく鮮血みたいな結末がいい

自己否定肯定他人を愛せども然るべきとき追い風が吹く

暗闇でDICコードを読むように意味のないこと追い詰める目に

大丈夫、もう平気だと泣きながら持ってもいないぬいぐるみ抱く

2018年4月13日金曜日

2018年2月くらいの短歌(1) 石塔

人間に向く向かないは置いといて文旦の皮突き通す指

げ、ん、じ、つ、とあんたは言うが目の前で夢みたいなことひたすら言って

何がしか運命だとかまじないを信じられるほど可愛くはない

愛される花のすべてをへし折って深爪だらけの君に渡そう

引き鉄を引く指曲げて口当てる罵倒聞こえぬふりをしている

眠れない夜に数える角砂糖紅茶に混ぜて忘れろ全部

石塔をハンマーで折る、いつだって自傷みたいな恋をしている

酷いこと悲しいことに耐え切れずハッピーエンドの矯正をする

生きている実感やたら欲しくって肺に冷たい空気を入れた

大人だし口先で甘い言葉吐く腹の中身はぐちゃぐちゃにして

まっすぐな形憧れ弧を描き落ちても正しい矢印のまま

2018年4月6日金曜日

2018年1月くらいの短歌 人生讃えて飲むための

真夜中は負に傾いて雪が降る明日は私の可燃ゴミの日

手を出してはいけない。これは気分良く人生讃えて飲むための酒。

指十本折って数えるだけのこと恋や金でも道のゲロでも

ラムコークまみれの夜を通過した二人の夜を加速する雪

銀色の鱗光らせスーパーの冷気で乾く魚たちの目

水をやり餌を与えて傍にいる手酷くいつか奪われるまで

瓶の中熟れてく酒に溶けていく氷砂糖のような優しさ

青空にそびえる冬のプラタナス正しいだけの一人でいたい

贅沢をしようかひとり真夜中にコーヒーのなか落ちていくラム

穏やかに淋しく思う飼い猫の陽に透けていた銀色の髭

2018年3月16日金曜日

2017年冬くらいの短歌(2) 免罪符とか

死にかけの息切れのように鳴く蝉へなりそうになる塞いでる夜

駅ホーム目的地からその先に向かう電車はゆりかごのよう

ホットココアにバターを入れる暴力を覚えてしまい冬が愛しい

性欲と恋愛の違い説くよりも組み伏す腕の重さが痛い

感情に名前が無くて飢えていて免罪符とかどうでもいいし

おおおんと鳴く深海の魚たち人もたまには鳴くと良いのだ

馬鹿だねと口を歪めて言うせいでどうやら卒倒しそうに甘い

魔法陣ひいて召喚してみたが役に立たない悪魔みたいだ

靴下は温かいより邪魔だから裸足でいたいと女神は言った

本日は午前絶望午後まれに希望そののち憔悴でしょう

2018年3月9日金曜日

2017年冬くらいの短歌(1) 承認欲求は

青色に燃えて承認欲求は小さく馬鹿と答えて消えた

かなしいと言葉に出して感情の重さを測る冷たい目盛り

苗字も名前も国も捨ててみて幸福なんかを求めてみたい

影を踏む日なた植木の葉が揺れて一番負けがつきまとう日々

ざんこくな気持ち吹雪いて加速してみんな私を追い越していく

尊くもない若さだけ過ぎていき楽しさだけが余計に残る

眠れない人の光は薄暗く朝になるまで冷える回廊

気が付くと傷だらけになる手足まで大事だなんて自己主張して

化膿した傷に軟膏塗り込んで小さく生きる約束をする

味の無いつらら折り舐める帰り道どうにか一人どこへでも行く